- $n - 1$次元球とは、$\mathbf{R}^n$空間で中心点からのユークリッド距離が等しい点の集合である。1次元球は円、2次元球は普通の球である。内側の領域を含まないことを強調して、円を円周、球を球面とも呼ぶ。対して、$n - 1$次元球によって囲まれる領域を$n$次元球体という。
ギルバートハウス › 円周・球面上の一様分布
円周・球面上の一様分布
球と球体
$n$ | $n - 1$次元球 $(n - 1)$-sphere |
$n$次元球体 $n$-ball |
||
---|---|---|---|---|
1 | 0次元球 0-sphere |
点のペア pair of points |
1次元球体 1-ball |
線分 line segment |
2 | 1次元球 1-sphere |
円 circle |
2次元球体 2-ball |
円板 disk / disc |
3 | 2次元球 2-sphere |
球(狭義) sphere |
3次元球体 3-ball |
球体(狭義) ball |
4 | 3次元球 3-sphere |
超球 hypersphere |
4次元球体 4-ball |
超球体 hyperball |
︙ | ︙ | ︙ |
円周・球面上の一様分布
- 円周・球面上の一様分布は、あらゆる方向の実現確率が等しい円周・球面上の確率分布である。分布が一様とは、部分領域に対する確率が領域の位置に無関係で、その大きさに比例することを表す。
- 円周上の一様分布の偏角$\theta$についての確率密度関数は以下の式で表される。
- $f_\varTheta(\theta) = \frac{1}{2\pi}$
単位円の弧の長さ$l = \theta$より、積分値(確率)は円周上の長さに比例する。
- $f_\varTheta(\theta) = \frac{1}{2\pi}$
- 球面上の一様分布の角座標(極角$\theta$と方位角$\varphi$)についての確率密度関数は以下の式で表される。
- $f_{\varTheta, \varPhi}(\theta, \varphi) = \frac{\sin \theta}{4\pi}$
単位球の面積要素$dS = \sin \theta\,d\theta\,d\varphi$より、積分値(確率)は球面上の面積に比例する。
- $f_{\varTheta, \varPhi}(\theta, \varphi) = \frac{\sin \theta}{4\pi}$
球体内の一様分布
- $U$が$\text{U}(0,\ 1)$に、$\boldsymbol{X}$が$m - 1$次元の単位球面上の一様分布に独立にしたがうとき、$U^{1/m}\,\boldsymbol{X}$は$m$次元の単位球体内の一様分布にしたがう。〔球体内の一様分布〕1
なお、$U^{1/m}$は$\text{Beta}(\alpha = m,\ 1)$にしたがう。
成分の平方和
- $\boldsymbol{X} = (X_1, \ldots, X_l, \ldots, X_m)$が$m - 1$次元の単位球面上の一様分布にしたがうとき、
- ${X_1}^2 + \cdots + {X_m}^2 = 1$がつねに成り立つ。〔成分の平方和(完全)〕
- ${X_1}^2 + \cdots + {X_l}^2$は$\text{Beta}\!\left(\alpha = \frac{l}{2},\ \beta = \frac{m - l}{2}\right)$にしたがう。〔成分の平方和(不完全)〕1
周辺分布
- $\boldsymbol{X} = (X_1, \ldots, X_m)$が$m - 1$次元の単位球面上の一様分布にしたがうとき、$X_i$はベータ型の分布にしたがう。〔周辺分布〕証明
- $X_i$は$\text{Beta}\!\left(\alpha = \frac{m - 1}{2},\ \beta = \frac{m - 1}{2},\ {-1},\ 1\right)$にしたがう。※$\text{Beta}(\alpha,\ \beta,\ a,\ b)$は$[a, b]$上のベータ分布を表す。
- 言い換えれば、$\frac{X_i + 1}{2}$は$\text{Beta}\!\left(\alpha = \frac{m - 1}{2},\ \beta = \frac{m - 1}{2}\right)$にしたがう。
- $\boldsymbol{X} = (X_1, \ldots, X_m)$が$m - 1$次元の単位球面上の一様分布にしたがうとき、$(X_1, \ldots, X_{m - 2})$は$m - 2$次元の単位球体内の一様分布にしたがう。〔成分消去法〕2
台集合 | 単位立方体 unit cube |
単位球体 unit ball |
単位球 unit sphere |
標準単体 standard simplex |
---|---|---|---|---|
備考 | a | - | - | b |
(成分) | $x_i \in [0, 1]$ | $x_i \in [-1, 1]$ | $x_i \in [-1, 1]$ | $x_i \in [0, 1]$ |
(制約) | - | $\sum_i {x_i}^2 \leq 1$ | $\sum_i {x_i}^2 = 1$ | $\sum_i x_i = 1$ |
(次元) | $n$ | $n$ | $n - 1$ | $n - 1$ |
周辺分布 | $\text{U}(0,\ 1)$ | ベータ型 | ベータ型 | $\text{Beta}(1,\ \beta = n - 1)$ |
(極限) | $\text{U}(0,\ 1)$ | 正規分布c | 正規分布c | 指数分布d |
- $X_1, \ldots, X_n$が$\text{U}(0,\ 1)$に独立にしたがう。
- $\boldsymbol{X}$が$\text{Dirichlet}(\boldsymbol{\alpha} = (1, \ldots, 1))$にしたがう。
- ベータ分布(対称)の正規近似より。
- ベータ分布のガンマ近似より。
球対称性
- $\boldsymbol{X}$が$\mathbf{R}^m$空間で球対称な分布にしたがうとき、$\lVert\boldsymbol{X}\rVert$を$\boldsymbol{X}$のユークリッド長さとすると、$\frac{\boldsymbol{X}}{\lVert\boldsymbol{X}\rVert}$は単位球面上の一様分布にしたがう。〔正規化〕
- $\boldsymbol{X} = (X_1, \ldots, X_m)$が球対称な分布にしたがうとき、$\frac{X_i}{X_j}$(ただし、$i \neq j$)は$\text{Cauchy}(0,\ 1)$にしたがう。〔成分の比〕3
独立な標準正規確率変数の比は、$\text{N}(\mathbf{0},\ \mathbf{I}_2)$が円対称なことから、この特別な場合にあたる。
- Harman and Lacko On decompositional algorithms for uniform sampling from n-spheres and n-balls.
- Voelker et al. Efficiently sampling vectors and coordinates from the n-sphere and n-ball.
- Arnold and Brockett. On Distributions Whose Component Ratios Are Cauchy.